天空の穴
この冷凍室は優秀
大学の頃
写真部なるものに所属しておりました
各部には大学から
部室と云う名の
長屋風プレハブの一室が与えられていました
腐るほど時間のあったあの頃
私や他の部員は
毎日そこに入り浸りの生活をしていました
狭いながらも一部屋があるので
私達は快適な環境作りに奔走しました
ある時
通学路にある電器店の前に
クーラー及び室外機の一式が
放置されているのを発見しました
もちろん夏は暑いので
部室では扇風機2台をフル稼働させていたのですが
クーラーがあれば一挙に快適な空間を確保できます
何日かその電器店の前を通るたびに確認しましたが
クーラーは旧式でどう見てもゴミ
そう判断したので
ある晩
電気関係に詳しい先輩に手伝ってもらい
そのクーラーを部室に運び入れました
早速先輩が設置作業をして
オアシスへのスイッチをオンにしました
果たしてそのクーラーからはほのかに涼風が噴き出し
私達は今後の快適な部室ライフを思い嬉々としました
クーラー稼働中ですから
もちろん入り口や窓は閉め切ってます
心なしか冷えが悪いのは
多分旧式のせいで
時間が解決すると思ってました
しかし
他の部員が外から部室にやってきて
入り口のドアを開けた時に
ヒヤッとした気持ちのいい空気が入ってくるのを感じました
外気の方が涼しかったのです
設置した先輩が配管等を点検すると
クーラーと室外機の接合部が破損して
ガスが漏れていました
旧式なのできっとフロンです
結局我々は
冷えるはずも無い部屋を閉め切り
そのうち冷えると云う儚い希望を胸に
我慢大会を挙行していたのです
また
こんな事もありました
部室には古い型の冷蔵庫があったのですが
この冷凍室に霜が大量に貼り付いて
容積を半分ぐらいにしていたので
後輩に命じて霜取りをさせました
後輩はドライバーで
霜をこそげ落としていたのですが
半分ほど作業が進んだ頃
ドライバーを庫内の配管部分に突き刺したらしく
その瞬間そこから
猛烈な勢いで噴出すフロンガスを浴びて
もがいていました
私はその図が何だか怖かったので
一瞬逃げようかと思いましたが
異様な光景に体が動きませんでした
冷蔵庫は後輩へ
思いのたけフロンを浴びせると
また何も無かったように静かになりました
呆然とする後輩
しばらく口も利けない
抜け殻のような感じです
私が
「大丈夫か?」
と尋ねると
バ・・・
バタリアンになるかと思いました~!
と
中々機転の利いたコメントが帰ってきたので
大丈夫だと悟りました
(
バタリアン知らない方はどうぞ)
かくして
二度もフロンをぶちまけたわが部室
もしもその上空のオゾン層に穴が開いていたら
それはきっと私たちのせいです
ソーリー
ミスターゴア
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